使い捨てカメラで写真を12枚撮影して、撮った順番変えずにそのまま無加工、無編集で12枚のスライドショー動画にするコンテストを開催しています。
春夏秋冬の四半期毎に、年3回開催を予定しています。
是非みなさんもご参加ください。
この記事では、『UNEDITED SS』無編集スライドショー コンテストを企画するに至った思いをまとめてみました。
企画意図
コンテスト名の「UNEDITED」とは無編集という意味です。
動画の基礎である画面の構成とカットの繋がりを、修正の効かない使い捨てカメラでやりたいと思い企画しました。
今は簡単に編集が可能です。編集ありきで撮影をしてしまうことで全体のプランニングが疎かになる傾向が増えてきました。だからこそ編集が不可能な特徴を活かせる使い捨てカメラでコンテストを開催したいと思っています。
皆様のご参加をお待ちしております。
*以下、この企画に至ったまでの思いを長文で書き綴っています。
お時間がある方のみお読みいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
純粋に画のパワーだけで見せる作品と出逢いたい
このコンテスト開催するにあたって思ったことは、純粋に画のパワーだけで見せれるものをみたいんですよ。それは自分で作りたいという思いもあれば、誰かがそういったものを作ってくれるのをみたいということでもあります。
映画は総合芸術だが、動画と映画は違うもの。
今回のコンテスト企画は、静止画の写真を1カット7秒、全12カットの合計1分24秒でただ撮影の順番通りに並べただけのスライドショー動画にするだけなんだけれども、僕はこれが動画の基礎だと思っていて、それは映像の画面の力だけを純粋に見れる動画になると思っているからです。
映画は総合芸術と言われています。いろいろな芸術表現、文学や音楽、 絵画、演劇、そして歴史、政治、法律 といったあらゆる要素が映画に集約されています。しかし、映画というカテゴリーではなく動画としてみると、YouTubeやInstagram、TikTokなどのようにネットで共有される映像には”手っ取り早く稼ぐとか手っ取り早くできる”といったような、レスポンシブがよく瞬間瞬間に答えの出るものが多く増えてきたように思えます。映像としてはそれが正統な進化の形なのでしょうし、社会全体の中では役立つツールとなってきました。
深みのある心に突き刺さるような重みのある作品
これは個人的な感想でしかないのですが、どうもそれでは深みのある心の中に突き刺さるような重みのある作品は残せないのではないか?と思ったのです。
なぜかわからないけれども、心のどこかに残っていて、いつまでも影響を与える作品をもっとみたい。その為には総合芸術と言われる、沢山の要素、文学や音楽、 絵画、演劇、そして歴史、政治、法律を深く掘り下げる必要がある。そう感じました。
画の力だけで作品を作るということ
そこで今回は、映像作品の持つ”画”のパワーに着目して、画だけで映像を深掘りした作品づくりをしようと思いました。
映像作品、動画における画とはフレーミングです。フレームの中に何を盛り込んでいるか?ということと、その連続性です。
次から次へと切り替わっていく映像において、人の記憶は薄れいでゆきます。その中で印象を残すには一つのカットで一つの要素しか伝えるのは難しいでしょう。
そして大事なのは、その連続の中でどう結びつけていくかです。
映像、動画の時間の感じ方
映像の持つ画の力で時間は、長くも短くも感じれるだろうし、そこが面白いのかなぁ?と思ってるんです。
音楽をつけると、時間の感覚が変わってしまいます。リズムは心拍数と同じで、その心拍数に応じて感覚が変わると言われるからです。ですから今回のコンテストではBGMをつけるのもNGにしました。
しかし、面白いのは画の力だけでも時間の感覚は変わってくるはずだと思うのです。
同じ、1カット7秒、全12カットの合計1分24秒のスライドショー動画でも時間の感じ方が変わってくると思います。そういう気づきもあると思います。
思い通りに行かない作品作りと向き合う
作品を作るということは思い通りにいかないことの連続だと思います。思い通りにいかないから愛おしいとも感じるのかもしれません。思い通りになったものはその場で消費されて取引の道具に使われておしまいです。しかし思い通りに作れたことと、作ろうとしたことは全く別物だと思います。
何か表現したいことがあって、その中で伝えようと努力をするが思い通りに行かない。それでも尚なんとかして想いを伝えようと努力する。事前に計画をして瞬間瞬間に全身全霊で立ち向かう。作品と向き合う。その突破しよう突き抜けようとする力こそが作品を面白くするのだと思っています。
しかも今回は慣れたスマホのカメラではなく、使い捨てカメラで撮るわけだから、尚更思い通りに行かない。その思い通りに行かない感じが面白いと思うんです。
撮る写真とその並びは組写真の面白さが出るでしょうし、撮影順を編集しないというのは向き合ってきた被写体と作者の経緯を垣間見る事になる。
動画にするということは、画の連続による視点の動き、薄れゆく記憶を記憶に定着させて全体の印象をどう残せるか?というのを作る事になると思うので、すごい人は、普通のスライドショーでもとても感銘深い作品を作れると思うのです。 それをみたいし、チャレンジしてみたいというのはあります。
1カット7秒、全12カットの合計1分24秒の理由
今回のスライドショーコンテストの規定を考えるに当たって、映像における最低限のルールに従って行おうと思いました。それがシーンの90秒ルールとカットの7秒ルールです。
映像で特に重要なのはカットの並び順です。並び方一つ変えるだけで映像の印象や意味は大きく変わって行きます。カットの並び順を一つ変えただけで、動画の意味は変わります。ですから撮影の前段階で、どんな映像を完成させたいのかイメージして貰う為に編集段階でのカットの入れ替えはNGとしました。
カットの並び順でも印象を大きく変えれますが、カットの長さでも印象というのは大きく変わって行きます。映像は観客に飽きずにみてもらわなければいけません。しかしいつまでも飽きずにみてもらうというのかがどんなに難しいかというのは、動画を作ったことがある方ならわかるかと思います。つまらない映像はいつまでもみてもらえません!
逆に短くするという方法もありますが、それはそれで観客に欲求不満を与えかねないです。YouTubeやInstagram、TikTokなどのネット動画の場合は逆に、欲求不満動画を大量に作ることで、常に観客を飢えさせ次の動画を見たい気持ちにさせる方法もあります。『瞬間的に面白かったもっと見たい』という気持ちにさせるにはうってつけでしょう。しかし、それでは今回の目的である『深みのある心の中に突き刺さるような重みのある作品』にはならないと思いました。
荒編集における1カット7秒ルール
どんなに短いカットでも、最初の編集の段階では7秒以上にしておきます。映像の編集は最初から決め打ちで尺(動画の継続時間)を決定することはありません。少しゆとりを持って並べておきます。これは荒編という作業で、本編集の前に行う仮編よりも前段階にあたる部分です。ざっと素材全体を見渡します。これは動画が瞬間瞬間のカットよりも全体を見た時の印象の方がとても大切だからです。連続で流すように目を通したときに、映像の印象がどのように残るのか?を考えます。
では、なぜ7秒かというと、人間が映像の意味を理解するのには、脳の構造上最低7秒必要だと言われているからです。
この最低限時間を並べてみた上で、全体を通してみた時に判断しやすいので7秒にしています。
全体の印象が決まったら、編集は仮編、本編と進み、細部をきめ細かく決定していくことになります。
そこで7秒ではあまりにも長すぎると感じる場面が出てきます。ミュージックビデオや30秒CMでは1カット7秒では伝えることがとても少なくなってしまいます。アニメも1カット内の情報が少ないためにとても長く感じてしまいます。つまり1カット内に占める要素の数によって印象が変わってしまうと言うことです。
ですので極端に短いカットを差し込むことももちろんあります。しかしそれは、飽く迄も全体の動画を見た時のどう伝えたいかを意図した上で判断しなければいけません。
今回のコンテストで、7秒ルールを採用したのは、観客に画の意味を読み取って欲しいからという意図があります。
画の意味を読み取った上で次の画を見て全体を俯瞰してみてもらいたい。そうすることで映像全体の評価ができると思ったのです。
1カットに与えれる印象はたった一つだけ
映像は連続で流れ去っていくものなので、一つのカットに与えれる意味は一つだけです。たった一つですら印象付けさせるのは難しいとも言われます。7秒の中に意味を与え、その連続で、全体を通してみた時にどのようなストーリーを与えるかが大事だと思います。如何に1カット1カット真剣に向き合うかが、より良い動画を作っていくかだと思います。
感情的な反応が続く時間90秒ルール
7秒ルールに従って1カット7秒にすることが最低限の条件だと思いましたので、次に全体の尺を決めなければいけません。今回の企画において最低限のカット数が12の理由は、動画にした時の人間の驚きなどの感情的な反応が続く時間から割り出しています。
人間の脳の中で起こる驚きなどの感情的な反応は90秒刻みで落ち着きます。(イライラしたら90秒グッと我慢)90秒は持続するわけですから、90秒を基準に組み立てれば長いものでも飽きさせずに見せることができますし、90秒の中では、どんなカットの連続でもその感情的な反応に紐付けられてしまうということです。具体的な例を言うとこうです。
最初にとてもショッキングな悲しげなカットから入ったとします。寒空の街中で横たわる女性の前で涙する男性の引きのカット、次に泣いている男性、こう続けば残り90秒は悲しい雰囲気だと観客の感情は印象付けられます。
詳しくはモンタージュとクレショフ効果を調べてみるといいでしょう。
モンタージュ(montage)は、映画用語で、視点の異なる複数のカットを組み合わせて用いる技法のこと。元々はフランス語で「(機械の)組み立て」という意味。映像編集の基礎であるため、編集と同義で使われることも多い。
https://ja.wikipedia.org/wiki/モンタージュ
クレショフ効果(英語: Kuleshov Effect、フランス語: Effet Koulechov、ロシア語: Эффект Кулешова)は、ソビエト連邦の映画作家・映画理論家のレフ・クレショフが示した認知バイアスである。全ロシア映画大学学内で、1922年(大正11年)に実験によって示されたものである。
https://ja.wikipedia.org/wiki/クレショフ効果
長々と書かせていただきましたが、共感いただけましたら、ぜひご参加いただければと思います。
ありがとうございました。