【映画観】スティーブ・ジョブズ これは気が触れた父親と認知をなかなかしてもらえなかった娘の物語

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作品データ
■ タイトル    スティーブ・ジョブズ
■ 原題      STEVE JOBS
■ 劇場公開日   2016年2月12日(日本)
■ 製作年     2015年
■ 製作国     アメリカ
■ 配給      東宝東和
■ 上映時間    122分
 

 
ストーリー
1984年。スティーブ・ジョブズ(マイケル・ファスベンダー)は激怒していた。Macintosh発表会の40分前、本番で「ハロー」と挨拶するはずのマシンが黙ったままなのだ。マーケティング担当のジョアンナ(ケイト・ウィンスレット)はカットしようと説得するが、ジョブズは折れない。そこへジョブズの元恋人・クリスアン(キャサリン・ウォーターストン)が、5歳の娘リサを連れて現れる。認知しようとしないジョブズに抗議に来たのだ。公私ないまぜに緊張感が高まる中、本番15分前に何かが閃いたジョブズは、胸ポケット付きの白いシャツを用意しろとジョアンナに指示。さらに共同創業者で親友のウォズニアック(セス・ローゲン)から頼まれたApple2チームへの謝辞をジョブズははねつける。やがて自らがCEOにヘッドハンティングしたジョン・スカリー(ジェフ・ダニエルズ)に励まされ、ジョブズは舞台へ出て行く……。1988年。Macintoshの売上不振から退社に追い込まれたジョブズが新たに立ち上げたネクストの発表会。にこやかに現れたウォズニアックに、ジョブズはマスコミに自分を批判したのはスカリーに強制されたのかと確かめる。相変わらず傲慢なジョブズに、ウォズニアックはマシンを創り出したのは自分なのに何もしていないジョブズがなぜ天才と言われるのかと憤慨。さらに今日の主役のNeXT Cubeはパソコン史上最大の失敗作だと通告する。小学校をサボって会場で遊んでいるリサをクリスアンが迎えに来る。あの騒動の後、ジョブズはクリスアンに家を買い与え、十分な養育費を送っていた。そして本番6分前。こっそり潜入したスカリーがジョブズの前に現れる……。1998年、iMac発表会。2年前、業績不振でスカリーを解雇したアップルがネクストを買収したのを機に復帰したジョブズは、現在はCEOを務めていた。ジョアンナから莫大な売上予測を聞き、勝利の歓喜に浸るジョブズ。だが一方で、クリスアンが家を売ることを止めなかったリサに激怒したジョブズは、ハーバード大学の学費を払わないとリサへ宣告。ジョアンナは、ジョブズとリサが仲直りしなければ会社を辞めると涙ながらに訴える。一人になったジョブズの瞼にいつも自分の愛を求めていたリサの姿が次々と去来する。本番10分前、ジョブズにウォズニアックがApple2のチームに謝辞をという頼みを蒸し返す。10億ドルの損失を出し、破産まで90日を切っていたチームだと再びはねつけるジョブズ。そして開始直前、リサが父への怒りを爆発させる。発表会は9時スタートを厳守してきたジョブズだったが、そんな遅れも気にせず彼はある真実をリサに語り始めるのだった……。
 
解説
アップル社の共同設立者でデジタルテクノロジーの常識を変えた男、スティーブ・ジョブズ。彼とその家族、関係者への約3年にわたるインタビューなどを基に、ベストセラーとなった記録本を原案に、ジョブズの半生を描く人間ドラマ。鬼才ダニー・ボイルが監督を務め、ジョブズをマイケル・ファスベンダーが演じる。
 
スタッフ
■ 監督  ダニー・ボイル
■ 脚本  アーロン・ソーキン
■ 原案  ウォルター・アイザックソン
 
キャスト
■ スティーブ・ジョブズ  マイケル・ファスベンダー
■ リサ・ブレナン(19歳) パーラ・ヘイニー=ジャーディン
■ リサ・ブレナン(9歳)  リプリー・ソーボ
■ リサ・ブレナン(5歳)  マッケンジー・モス



 

ジョブズの話はもう聞き飽きたのです

高校生の頃からジョブズの熱狂的なファンで、図書館に通ってはアップルの関連本を読み漁っていたというのもあって、何が起きたか?何をしたか?どう言う人物なのか?っていう物語の内容にはもう興味はなかったし、残念なことにジョブズはもう亡くなってしまったから、当然の事ながら新しいエピソードなんて聞く機会はないのだろうと思っていたのです。
wiki読めばわかるし、最新の神話はガジェット系のブログで読めるからね。
ドラマや映画は何度もされてるし、ありきたりな伝記映画なんて見る必要はないと思ってたんよ。
おいらにとってはジョブズへの信仰は、ジョブズが亡くなった時に、心斎橋のアップルストアへ追悼に行った時に全てを終わらそうと思ったし、死後も奉るのはジョブズの望むところではないと考えていたし、何よりも死んだ後、変化のないものにしがみついてしまうのは自分の生き方としては正しくないと思っていたので、自ら信仰を辞めようと思ったのです。
 

今回の映画は行こうとは思わなかった

2013年版のジョブズの映画も見にはいかなかったし、見れればいいかな?の程度だったし、無理して時間を作る程のものとは思ってはいけない!と決めていたし。
でも奇跡的に、今回時間ができたので見ることになったのです。
それが運命だったとおいらは思った
とても感動してしまったのよ。
思いが積み重なっていたものが一気に溢れ出してしまったのかもしれない。
ジョブズの抱える思いを感じてしまったのかもしれない。
独りで行ったんだけどね、感動して泣いちゃったのよ。
泣いた原因は、だいたい予想はつくんだけどね。そんなことは言いたくないよ!
偉大な物語を個人的な感情っていうチープなものにしてしまうから言いたくないよ!
素直になれない男の苦しみとかそんなことを言って自分と同一化しちゃったとか、しょーもない話で終わらせたくないんよね。

信仰というのは気色の悪いものです

おいらが感じたこの映画の感想は、個人的なジョブズへの思い入れによって溢れ出た感動だと思うのです。
だからおいらのこの感動は他の人の感動とは決して相容れないものなのだと思うのです。
ジョブズへの憧れ、自分もジョブズのようになりたかった!という思い入れによって、自分はジョブズだと思い込んでしまったが故に感じる感動なんよ。
でも、と同時にこれはもしかしたら、誰でも楽しめるように作られた映画なんじゃないかな?と思ったのです。
今回はちょっとその辺をお話しします。

父と娘の物語

物語の筋はジョブズという気がふれているダメな経営者と、そのジョブズが認知をするのを拒み続けたリサという女の子の物語。
これに最初に気付かないと途中が楽しめなくなると思う。
もちろんラストは、父と娘の和解という形で強制的に締めくくられるから、それさえ最初に分かっていればジョブズの事を全く知らなくても楽しめる映画だと思うな!
ジョブズが何したとか、どういう功績を残したかなんて、この映画においては二の次なんだと思う。
不器用な人間が父親としても不器用で、でも素直になれなくて、娘は困っているのに、不器用な父親はそれに気付かず時間は進む。
父と娘の物語を、ジョブズの象徴である基調講演の舞台裏で全てを凝縮して会話劇で物語を進める。テンポよくて面白い。

ミニマルな構成

ジョブズが作る商品はシンプルにしようと突き詰めた。
その思想がこの映画にも表れていて面白い。
物語は序破急の最小構成。全て基調講演の舞台裏で話が進む。
最初はMacintoshの基調講演。物語序章で登場人物紹介。
ここではジョブズの歪んだ性格ゆえに絶対に認知したくない娘リサとの関係が描かれる。
1984年「Macintosh」

Macintoshの発表の裏で、ジョブズはリサにMacを触らせる。するとリサはMacで絵を描くんよ。ここで親子の絆の描写が入る。感動を呼ぶための良い伏線。そして悲劇の伏線も。Macintoshを作る直前に自分が作ったコンピュータ『Lisa』の名前の由来を”Local Integrated Software Architecture”の頭文字をとったものだと残酷にも娘のリサに告げてしまう。
次は物語をぶち破る出来事。ジョブズがAppleを追い出されて次に作った会社NeXTでの基調講演で、娘リサが音楽を通して父親を気遣うエピソード。
1988年「NeXT Cube」

Appleを追い出されて何もかもが上手くいっていないけれどジョブズは大丈夫だ!と自信満々。でもみんなはお前なんて大っ嫌いだ!と言っている。娘リサは健気に父親の側にいようとするが、子供は学校に行きなさいと、ジョブズに追い出されてしまう。
最後は、ジョブズの復活を象徴するiMacの基調講演で娘リサとの確執をジョブズがリサの持つミュージックプレイヤーを通じて歩み寄ろうとする急展開
1998年「iMac」

後のiPod誕生やiPhone誕生を匂わせる台詞はニヤリとさせられるね。でもそんなことよりも、健気に頑張り続けた娘リサが最後の最後で救われるところがいいのよ。Macintoshの基調講演の時にリサがMacで描いた絵を今でも大切に持っているって描写はずるいよね。
構成力がすごいのなんのって、ジョブズや周りの人の名台詞がこれでもか!というほどグサリとくるタイミングで言われては物語を加速化させる。
それがね、あまりにも絶妙なタイミングだもんで、知っている人はぐっと感情を揺さぶられたんじゃないかなと思うよ。

好きだなこの映画

映画館で観れて良かった。
思いがけない感動だった。
今までの描かれたジョブズのクズっぷりを披露する映画ではない。
あんな偉大な人もクズなんだよっていうエピソードに飽きた人には丁度いい映画だと思う。
そう、だから好きな映画だ。ちゃんと物語にしてくれている。
映画を楽しむ予備知識としては、どういう人物達がいてどのような功績を残して、そしてどんな確執があったかを知った上じゃないと楽しめないのかもし れない。
原著を一通り読んでおかないといけないのかもしれない。もしくは2013年版を見ておく必要があるかもしれない。
にわかや素人を相手にした映画ではないのかもしれない。そういう意味ではダメな映画だ。
でも、予備知識があった上でこの映画を見ると、思い切った大胆な構成で全てを見せてくれる面白い映画だとわかるかもしれない。
ジョブズの多面的な性格の新しい一面を観客は触れることができるのかもしれない。
そういう意味でスティーブ・ジョブズをよく表した映画だ。
予想していなかったところからやってきた感動だったのでショックも大きかった。
ジョブズを信仰して、でも信仰を辞めようと心に誓って、かといって否定するわけではなく、
結局魅力的に感じて憧れてしまっていることを自覚しつつ、そうは言っても自分はジョブズになれないということもわかりつつ、
でもジョブズよりも偉大になりたいという欲求だけは誇大妄想的に感じていたのだけれども、自分の中で改めて
自分の心の中にある思想を信じ抜こうと再認識したのでした。
 


 
おいらはおいらの人生を歩む。
バイチュ〜♪ (。^3^)ノシ⌒★

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この記事を書いた人

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