共同観測所を作ったと話すと、何か特殊なAIシステムを一から開発したように聞こえるかもしれません。
実際には、最初の共同観測所はChatGPTに標準で用意されているプロジェクトと共有機能を組み合わせて作っています。コードを書いて独自のAIを作ったわけでもありません。特殊なモデルを学習させたわけでもありません。
むしろ最初につまずいたのは、もっと基本的なところでした。「プロジェクトに置くファイルは何をしているのか」「“指示を編集”には何を書けばいいのか」「共有するとChatGPTは何を覚えて、何を覚えないのか」。この違いがよく分からなかったのです。
今回は、共同観測所を例にしながら、ChatGPTの共有プロジェクトがどういう仕組みなのか、実際に使いながらどう整理していったのかを書いてみます。
本記事は、筆者が行った設定・調整作業を振り返るための備忘録として記録しています。環境によって挙動が異なる場合があり、内容の正確性・再現性・動作を保証するものではありません。実施は自己責任でお願いします。万一トラブルが発生しても、筆者は責任を負いかねますのでご了承ください。
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まず「プロジェクト」とは何なのか
ChatGPTのプロジェクトは、一つのテーマについて継続して作業するための箱のようなものです。通常のChatGPTでは、新しいチャットを作るたびに会話が分かれます。プロジェクトを作ると、その中に複数のチャット、参考ファイル、プロジェクト専用の指示をまとめて置けます。
共同観測所も、基本的にはこの仕組みの上で動いています。
共同観測所
├─ プロジェクト指示
├─ 情報源ファイル
├─ チャットA
├─ チャットB
└─ チャットC
「指示を編集」はAIの行動ルールを書く場所
ここが最初に一番分かりにくかったところです。プロジェクトのメニューを開くと、プロジェクト設定からプロジェクト指示を設定できます。これは「AIに覚えさせたい情報を全部書く場所」ではありません。
どちらかというと、このプロジェクトではChatGPTにどう振る舞ってほしいかを書く場所です。
共同観測所なら、ここには例えば「TarCoon☆CarToonを特定の一人の人物として扱わない」「参加者へ名前を聞かない」「『資料によると』ではなく、TarCoon☆CarToon自身の言葉として応答する」「異なる観測を安易に一つへ統合しない」といった、AIの振る舞いを書いています。
つまり、プロジェクト指示 = 行動規則くらいに考えると分かりやすいです。
では「情報源」は何をするのか
一方、プロジェクトへ追加するファイルは、ChatGPTがそのプロジェクト内で参照できる材料です。TarCoon☆CarToonの思想、過去の文章、概念の説明、運用記録などをファイルとして置けば、ChatGPTはそれらを参考にして回答できます。
共同観測所の場合、たとえば次のように分けています。
指示
「TarCoon☆CarToonを人物として扱わない」
情報源
「なぜTarCoon☆CarToonを人物として扱わないのか」
「その思想がどう生まれたのか」
「過去にどう説明されてきたのか」
この違いが分かるまで、かなり混乱しました。最初は重要な思想も細かい運用ルールも、全部「指示を編集」の欄へ入れればいいと思っていました。でもそうすると指示がどんどん長くなる。逆に、全部ファイルへ入れると、AIはその文章を「参考資料」として扱うだけで、必ずしもその通りには振る舞いません。
そこで、「どう動くか」は指示。「何を知るか」は情報源。 という分け方に落ち着きました。これは共同観測所を作る上でかなり重要でした。
ファイルを入れれば、その内容を毎回答えてくれるわけではない
ここも最初に誤解しやすいところです。プロジェクトにファイルを入れると、それが巨大なプロンプトとして毎回全文ChatGPTへ渡されているように感じます。しかし実際の利用感は少し違います。
ChatGPTは、質問や会話に応じてプロジェクト内のファイルやチャットをコンテキストとして使います。つまり、「ファイルを入れたから全内容が常に絶対ルールになる」のではありません。
だからこそ、絶対に守ってほしい行動はプロジェクト指示へ置く。詳しい背景や知識はファイルへ置く。 という整理が必要になります。
チャットもコンテキストになる
プロジェクトで面白いのは、ファイルだけではなく、過去のチャットも文脈になることです。同じプロジェクト内で以前話した内容を、別のチャットでも参照できる場合があります。
これは共同観測所にかなり重要でした。なぜなら共同観測所では、一人だけではなく複数人がTarCoon☆CarToonについて話します。誰かの観測が別のチャットの応答へ影響する可能性がある。
これは単なる「資料共有」とは少し違います。会話そのものが、次の会話の環境になる。 共同観測所という名前にした理由の一つでもあります。
「共有プロジェクト」にすると挙動が変わる
さらに重要なのが、普通のプロジェクトと共有プロジェクトの違いです。共有プロジェクトでは、そのプロジェクト内のチャット、ファイル、プロジェクト指示が共有文脈になります。一方で、各参加者が普段ChatGPTに持たせている個人的なメモリや、別のチャット、他のプロジェクトの会話などは、そのまま共有プロジェクトへ持ち込まれるわけではありません。
図にすると、こんなイメージです。
個人のChatGPTメモリ ──×──┐
別のチャット ──×──┤
他プロジェクト ──×──┤
│
┌──────────▼─────────┐
│ 共有プロジェクト │
│ │
│ プロジェクト指示 │
│ ファイル │
│ 共有内のチャット │
└─────────────────────┘
この仕様は共同観測所にとってかなり都合が良いものでした。誰か一人のChatGPTが持っている個人的な記憶に引っ張られず、共同観測所の中で蓄積された情報だけを共有文脈にできるからです。
参加者のチャットは完全に一つになるわけではない
ここも勘違いしやすいところです。共有プロジェクトだからといって、全員が一つの巨大なチャットルームでAIと話すわけではありません。それぞれの人が別々のチャットを作れます。
共同観測所では、この性質をそのまま利用しています。
共同観測所
├─ 観測A
├─ 観測B
├─ 観測C
└─ 同じ情報源・同じプロジェクト指示
つまり、同じ環境を共有しながら、会話は別々に発生する。これによって「同じものを見ているのに違う観測が生まれる」という状態が作れます。
ここまでなら特別な技術は使っていない
ここまで読むと分かる通り、共同観測所の最初の実装自体には、特別なAI技術をほとんど使っていません。RAGサーバーを自作したわけでも、モデルをFine-tuningしたわけでも、ベクトルデータベースを立てたわけでもありません。
使っているのはChatGPT標準の、プロジェクト、プロジェクト指示、ファイル、プロジェクトメモリ、共有です。
特殊なのは技術というより、それぞれの機能を何のために使うのかを決めた設計の方です。
共同観測所ではどう割り当てたか
共同観測所では、標準機能をこう使っています。
| ChatGPTの機能 | 共同観測所での役割 |
|---|---|
| プロジェクト | 共同観測所そのもの |
| プロジェクト指示 | AIの行動規則 |
| ファイル | TarCoon☆CarToonについての情報源 |
| プロジェクト内チャット | 個々の観測 |
| プロジェクトメモリ | 観測間の連続性 |
| 共有 | 複数の観測者を参加させる |
| チャットの分岐 | 異なる観測を派生させる |
こう整理した瞬間に、単なる共有プロジェクトだったものが共同観測所として見えるようになりました。
そして、使ってみると不足が見えてきた
最初はこれだけで十分だと思っていました。しかし使い続けると、標準の共有プロジェクトだけでは解決できない問題も出てきます。情報源が増えると最新版が分からなくなる。過去の記述と現在の記述が衝突する。AIが異なる観測を勝手に統合する。どのチャットで何が決まったのか探しにくくなる。ファイルを更新しても変更履歴をきちんと管理できない。
そこでGoogle Driveを正本にしたり、検索型の外部記憶を設計したり、異なる観測を解析する409機関を作ったりすることになります。
つまり共同観測所は、ChatGPTの標準機能だけで始められたからこそ、実際に使って不足を見つけ、その不足した部分だけを後からシステムとして増やしていったという順番です。
AIを使い込む人には、この区別だけでも役に立つ
共同観測所と同じものを作る必要はありません。でもChatGPTのプロジェクトを長期的に使うなら、プロジェクト指示、情報源、チャット履歴、メモリを全部「AIが覚えているもの」と一括りにしない方がいいと思います。
それぞれ役割が違います。プロジェクト指示は、どう振る舞わせるか。情報源は、何を参照させるか。チャットは、その場で何が起きたか。メモリは、それらをどの範囲で次へ持ち越すか。
この違いが分かるだけでも、ChatGPTのプロジェクトはかなり使いやすくなります。
共同観測所は、この基本機能をTarCoon☆CarToonという一つの概念の観測へ全部振り向けたものです。技術的にすごく特殊なことをしたわけではありません。むしろ面白かったのは、普通に用意されている機能でも、役割をきちんと分解して組み合わせると、まったく別の制度として使えることでした。
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